2009年03月30日

第9回 科学ひろばサイエンスカフェ「科学的証拠って何? 〜模擬裁判を通じて,法廷における科学のありかたを考える」(3/28) 無事終了しました!

お陰様で,たいへん盛況でした.

今回のサイエンスカフェに参加された蛯原弘子さんに,参加者
レポートを書いていただきましたので,転載いたします.

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科学的証拠って何?
     〜模擬裁判を通じて,法廷における科学のありかたを考える
                        (文:蛯原弘子)

「裁判のロールプレイ?科学的証拠って?」と興味・関心のみに突き動
かされて☆初参加☆しました。参加者の大半は男性。夕方からの開催だ
と、女性の参加者は少なくなる?参加者は3つのテーブルにのんびり座
って、お茶菓子を片手に穏やかにおしゃべりしています。

18時になると、早速、弁護士の中村多美子さんのご紹介、そして裁判の
基礎知識の簡単な説明から、サイエンスカフェが始まりました。

今回の材料は、「携帯電話の電波塔の建設の差し止めを求めるべきかど
うか」という内容の実際にあった裁判のロールプレイです。「3つのテ
ーブル」は仕掛けであり、参加者はテーブルごとに「原告代理人弁護グ
ループ」「被告代理人弁護グループ」「裁判官グループ」と分かれまし
た。

このような討論メインの、しかも裁判モノというサイエンスカフェを体
験された方はあまりいらっしゃらないのではないか、と私は思いました。
そこで、その様子を少し長めにお示しします。

それぞれのグループに、裁判の証拠説明書のサンプルが配られます。

ちなみに私は、この裁判を起こした原告側(住人側)グループです。資
料は60枚近くもあります。30分ほどかけてグループの皆で資料を読み、
訴訟のための戦略会議をします。他のグループも同様に会議をしていま
す。

P1010755.JPG

議論のポイントは予め講師より与えられました。主なポイントは次のと
おり(配付資料より引用)です。

P1010758.JPG

【原告側】
・携帯電話の中継塔を差し止めるための根拠(証拠)とは何か。
・中継塔を操業すべしとする被告主張を論破するために必要な証拠は何
 か。

【被告代理人弁護団側】
・中継塔を差し止めるための根拠と原告が主張する証拠に対する反論。
・差し止めるべきではないとする主張の論拠。

【裁判官グループ】
・どんな場合に、差し止めを認めるべきなのか。
・それには誰のどんな証拠が必要なのか。

続いて、各グループから弁論を行う人を1人ずつ出して、原告側弁論(約
10分)、被告側弁論(約10分)、原告側反論(約5分)、被告側反論(約
5分)を行います。

この弁論、またこれに先だったグループ内会議では、活発な意見の交換が
行われました。黙って眺めているだけの人はほとんどいません。とても脳
を刺激される話し合いでした。その内容は、というと、とても簡単には伝
えられません。次の機会がありましたら、ぜひ体験して下さい。

P1010760.JPG

ところで、今回のサイエンスカフェのテーマは裁判の内容や議論の勝ち負
けではなく、「裁判における科学的証拠って何?」です。
中村さんから渡された資料は、原告側、被告側それぞれの証拠書類のリス
トとその内容の簡単な概要です。原告側の主な資料は、電波被害患者の事
例、電磁波とガンなどの病気の発生の関係を示す科学論文などです。被告
側の主な資料は、電波塔を建てるにあたっての国の基準、携帯電話の電波
と健康の関係を示す科学論文などです。

「科学的な証拠」として、科学論文は有効であるような気がします。しか
し、原告側の提示する論文では健康被害の可能性がある、とあり、被告側
の提示する論文で健康被害の可能性は無い、とあります。
どちらが正しい?

このサイエンスカフェの参加者の議論から出た意見には、「科学論文は、
現時点で証明できる事実を示すのみである」というのがあります。実際の
裁判では、これらの科学論文の「正しさ」を巡って長い応酬があったそう
です。そして実際の判決は「原告側の訴えを棄却する」でした。

将来の健康被害の可能性について、科学的に証拠をあげてその正しさを明
らかにすることは、とても難しいでしょう。参加者の中からは、このよう
な裁判例の際には、環境保全や化学物質の安全性の問題の際に聞かれる
「予防原則」(詳しい意味は<環境用語><予防原則><予防的措置>で
検索できます)についても検討すべきである、との指摘もありました。し
かし、現在の私たちの国では、「予防原則」の考え方が浸透していないこ
とも指摘され、少なくとも過去の裁判では「予防原則」を理由に住民側が
裁判に勝った例はないそうです(中村先生のお話しでは、フランスでは住
民側が勝った例が多いそうです)。

私の感想を最後にお示しして、このレポートを終えたいと思います。
“サイエンス”に関わる仕事をしている私は、少なくともこのような裁判
例において「科学」は有効ではないかもしれない、という結果に少々ショ
ックを受けました(もちろん「科学」そのものと例えば「科学的捜査」と
は別物です。科学的手法によってコツコツと「事実」を積み上げることは、
たいへんに重要なことと思います。)。

私は、「科学」とは真実に近づこうとする学問であるとともに、私たちの
生活や価値観に変化を与えるキッカケとなる「何か」と考えています。一
方で、「科学」によって私たちの生活(今回の裁判例では<生活の安全・
安心>)や価値観がどのように・どの程度変化したのか、将来どうなるの
かについて、「科学的に」示すことはとても難しいことと思います。しか
しながら、「科学」と「生活」がとても近しい関係にある現在、「科学」
と「生活」について知ること、考えること、話すことは大切なことだな、
と改めて思いました。


posted by K_Tachibana at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月20日

3月28日(日)の中村多美子さんのサイエンスカフェの受付は締め切りました

みなさま

3月28日の中村多美子さんのサイエンスカフェは定員に達しましたので
開催9日前ではございますが,受付を締め切らせていただきました.

どうぞよろしくお願い申し上げます.
posted by K_Tachibana at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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